第9回学術講演会
- 日時
- 平成23年9月18日(日) 13:30〜16:30
- 場所
- 愛媛大学(城北キャンパス)グリーンホール
今年度の学術講演会は、132名(東予地区:30名、中予地区:90名、南予地区:12名)と多くの方にご参加いただきました。誠にありがとうございました。
学術講演会は、被災地でのトイレ環境の改善にご尽力されておられるNPO法人トイレ研究所 代表理事 加藤篤先生をお招きし、「災害時のトイレ対策」についてご講演いただきました。被災地におけるトイレの現状や災害用トイレの種類や特徴、そしてトイレ対策の基本的な考え方について話されました。被災地でのトイレの現状は、仮設トイレの設置はあっても、プライバシーの確保が難しかったり、バリアフリーでなかったりするため、「排泄したい」という気持ちさえも奪ってしまうこともあるという厳しい現状を知り、災害時においても排泄ケアは大変重要なものであると再認識しました。
また、東日本大震災発生から1週間後よりJMAT(ジェイマット)で被災地で看護を実践されました、済生会松山訪問看護ステーション 所長 石田けい子先生に「震災1週間後の被災地の生活の状況」というテーマでご講演いただきました。被災地の惨状に言葉を失いながらも診療所に来られる方々に向き合い看護している様子は、私たちケアに携わる者にいま何ができるのか、これから何をしていくべきなのか対象の方との向き合い方についても考える機会となりました。
実践報告は、平成22年度第2回地区別勉強会で発表していただいた施設の中から、東予地区は介護老人保健施設 若水ケアセンター、中予地区は医療法人 同仁会 吉田病院、南予地区は介護老人保健施設 つくし苑の方々に発表していただきました。若水ケアセンターの事例では、下剤の影響で水様〜泥状便を便失禁してしまい、「いつも(スタッフの方に)申し訳ない」・「こんなんやったら死んだ方がいい」といった入所者の悩みにスタッフが気づき、便の形状をコントロールし、快適な排便ができるように下剤の減量を試みた経過が報告されました。その結果、トイレで自然排便を認めるようになったり、便の形状が有形便に変化したり、1日に頻回に出ていた泥状便が1回に減少するなど排便状態改善の嬉しい報告がありました。吉田病院の報告では、尿意を訴えない患者に対し、排尿のアセスメントの実施、スタッフが患者の尿意に関心を寄せながらトイレ誘導を行ったことで、トイレでの排泄回数が増加し、リハビリと食事時間以外は臥床傾向であった患者は排泄時には離床するようになったなどの変化が報告されました。尿失禁がありオムツを常時使用している患者であっても、可能な限りトイレで排泄できるように支援することの大切さを再認識できました。つくし苑の報告では、認知症高齢者の入所時から排泄ケアに取り組み、本人のADLに応じたトイレの選択、部屋環境の設定、さらに看護職と協力した下剤の内服量の調整などの援助によって、おむつからトイレでの排泄が可能となった事例が報告されました。利用者と十分なコミュニケーションをとり、その人にあった排泄ケア方法を選択することの必要性が伝えられました。
開会の挨拶
えひめ排泄ケア研究会 代表世話人 陶山 啓子
第一部:実践報告
1.地区別報告会
座長 老人保健施設やすらぎの杜 リハビリテーション部 部長 形山 泰次郎
東予地区 「下剤のコントロールにより排便状態が改善した事例」
若水ケアセンター 兵頭 恵美子
中予地区 「おむつ内排泄からトイレ排泄に向けた取り組み」
吉田病院 山本 比呂美
南予地区 「おむつ外しへの取り組みについて」
介護老人保健施設つくし苑 森 太樹
2.地区別活動報告および支部長紹介
東予支部支部長
西条愛寿会病院 看護師長 青野 ひとみ
中予支部支部長
特別養護老人ホームなかやま幸梅園 看護主任 窪田 里美
南予支部支部長
老人保健施設やすらぎの杜 リハビリテーション部 部長 形山 泰次郎
第二部:学術講演会
座長 泌尿器科 あらきクリニック 院長 荒木 映雄
「災害時のトイレ対策」
講師 日本トイレ研究所 代表理事 加藤 篤 先生
【加藤篤先生のご紹介】
1972年、愛知県生まれ。芝浦工業大学卒業。1997年からトイレ調査やシンポジウム等の企画・運営に従事し、現在、NPO法人日本トイレ研究所代表理事としてご活躍中です。野外フェスティバルや山岳地などにおけるトイレ計画づくり、災害時のトイレ対策、小学校のトイレ空間改善、養護教諭を対象にした研修会、子どもたちにトイレやうんちの大切さを伝える出前授業を展開されています。
おもな著作文等
- 『元気のしるし朝うんち』(共著)少年写真新聞社.2010
- 『水の知』(共著)化学同人.2010
- 『うんちっち!のうた』(作詞)日本トイレ研究所、2009
- 『震災時の避難所等のトイレ・衛生対策』保健医療科学.2010
- 『途上国の衛生環境改善に向けたトイレからのアプローチ』月刊浄化槽.2007
- 『山岳トイレ技術分野の概略と期待』環境研究.2005
「震災1週間後の被災地の生活の現状」
講師 済生会松山訪問看護ステーション 石田 けい子 先生
【石田けい子先生のご紹介】
済生会松山訪問看護ステーションの施設長で、在宅ケア推進委員会委員長、愛媛県訪問看護ステーション連絡 協議会理事としてもご活躍中です。3月11日の東日本大震災発生から1週間後よりジェイマットで被災地に入り看護活動を実践されました。 その時の経験をふまえて、被災地の生活や排泄の状況についてお話しいただきました。
閉会の挨拶
えひめ排泄ケア研究会 監事 岩田 英信
会場にて、おむつ等の排泄ケア用品を展示